昭和27年に『鎖国』という本が出版された。その本の出版によって知識階級は頭を叩かれる思いがした。そして貪るようにこの本が読まれ、日本人の心に深く潜んでいたヘドをみる思いがした。歴史学者ならぬ倫理学者の和辻哲郎が警鐘を鳴らしたのだった。その彼の墓と対面していると、飾らず、驕らず、質素な中に落ち着いた、いぶし銀のような重みと深さを感じさせる。ここに和辻哲学の世界があったかと思える。
兵庫県生まれ、東大卒業後、東洋大・京大教授を経て、昭和9年に東大教授になった。大正2年に外遊し哲学者ハイデガーに師事し、7年に『原始仏教の実践哲学』で学位を受けている。そして戦後、さきの『鎖国』を出版。読売文学賞に輝き、昭和30年に文化勲章を授与される。
大学の研究室でも弟子たちとざっくばらんに接していた。自分で『いため御飯』をつくる教授だったというからには、理論をもてあそんで、しかめ面の人物ではない。リベラルな中にも繊細なものを持っておられたのである。でなければ、『鎖国』は生まれなかったといっても過言ではない。和辻哲郎の墓もそれを物語っている
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