「木曾路はすべて山の中である・・・」ではじまる藤村の『夜明け前』は、自然主義文学の代表といって過言ではあるまい。 この小説は劇団民芸の得意な出し物であった。そしてまた、この作品は、藤村自身のルーツを謳いあげていたのだった。信州は馬籠随一の名門の出であったことから筆をとり、幕末の社会情勢の中で、財産は減り、明治維新に遭遇した父・正樹の物語であった。藤村は四男三女兄妹の末子として生まれた。肉親中でもっとも敬愛していたのは長姉だ。彼女から文学的素養を得た。長兄は傾いた家運をたて直そうと努力したが、不遇な一生だった。次兄は社会運動家。すぐ上の兄は放蕩と病毒で倒れた。このような兄弟の中で育った藤村だが、木曾の自然で養われた、厳格で素朴、物怖じしない作風が一貫して作品中に流れている。
|
墓地所在地は、変更になっている場合があります。
トップページへ戻る |